対話する生と死
対話する生と死
posted with amazlet on 07.02.12
河合隼雄
大和書房
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p.4

次から次へと新しい商品が出てくる、新しいアミューズメントが出てくる。
あれもこれもと手に入れるために努力しているうちに、老いや死が訪れて
くるときが来て驚いても、もう遅いということになる。


(中略)


人間は人間以外の存在を自分の思うままに操作したり、変化せしめたりを、
あまりに容易にできるようになったので、人間が人間に対するときも、
自分の思い通りに動かそうとしたり、変化せしめたりしようとして、
相手が「いのち」というかけがいのないものをもっていることを
忘れてしまうのではかなろうか。


★★★★


"operation"という英単語があります。


「手術」「軍事行動」「操作」等のいろいろな訳語が
辞書に載っていますが・・・


根本的な意味は「操作」だと思います。
機械や人などを「あやつる」「操作する」する場合に
使われる単語です。


現代は機械に満ち溢れています。コンピューター、携帯、
パソコンのゲーム、等々。機械は、故障しない限り自由に
操ることができます。ボタンひとつで色々なことができる。
そして、機械とばかり接触していると、つい人の心の中に
危険な「万能感」が生まれてしまう可能性がある。


つまり、人間も機械みたいに操ろうとする衝動が、無自覚の
うちに生じる傾向がある。人間は機械みたいにデジタルで動く
存在ではないのに、書店には「人を動かす」「人の心を変える」
等のハウツー本が溢れている。


人間は理屈では割り切れない、複雑極まりない存在でる、という
基本姿勢を忘れてはならない。特に心理カウンセラーのような、
対人援助にかかわる仕事をしている人間こそ、特に「人間とは
分けのわからないものである」という意識を強くもたなくては
ならない。


自戒の念をこめつつ。



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