GMAT RC(Reading Comprehension)において良く出題されるテーマの1つにフェミニズム(女性論)があります。オフィシャルガイドにも、フェミニズムに関するパッセージがいくつか掲載されています。


The Official Guide for GMAT Review


今日は、p.374〜p.375の文章のポイントを解説します。"Current feminist theory..."で始まる文章です。これは学術論文ではなく、GMATで高得点を目指す方を支援するための解説文なので、議論がやや大雑把になりますがご了解ください。


key word #1 "stories"(物語) 2行目


物語(story)は、フェミニズムを考える上で大切な概念の1つです。他の動物と比べると、人間は文化や伝統等の、本能以外の要素によって大きく行動を規定される生き物です。従って、男女差においても「本能的な違い、生理的な違い」に加えて「文化的な違い」が存在します。


そして、文化的な存在である人間が生きていくためには「物語」が必要です。国家に「建国神話」が必要な様に、家族に「共通の姓」というフィクションが必要な様に、女性にも「物語」が必要です。


平塚らいてうは「元始女性は太陽であつた」という「物語」を提起した。女性がどのように生まれ、何を成し遂げ、そしてどこへ行くのか?女性の本質は何なのか?そのような「物語」がないと、女性は自分の自我を安定させることはできない。


key word #2 "historical continuity"(歴史的連続性) 10行目


本文によると、current feminist theory(最近のフェミニズムの理論)は、oral narratives(口頭で伝えられる話、談話、物語)をmethodolgy(方法論)として女性の reality(現実)に迫ろうとしている。そして、oral narrativesが、女性にhistorical continuity(歴史的連続性)をfurnishして(与えて)いる。この、女性のoral narrativesによって示される歴史は、standard histories(通常の歴史、すなわち、今まで男性が提示してきた歴史)とは異なり、the perspective of women(女性の視点)からのexperience(経験)をrepresent(提示)している。


historical continuity(歴史的連続性)は、人文系の学問を語る上で必須の概念です。歴史は、過去の「事実」を並べただけの、「様々な出来事の時系列による羅列」では決してない。歴史とは、人間の集団や個人の正当性を保障する「物語」によって、様々な出来事に「意味」と「連続性」を与える。「物語」や「歴史的連続性」があって、個々の出来事(例:戦争)に「意味」が生じる。


1人の女性の人生においても同様のことが言えます。今までの人生を総括する「物語」を作ることで過去を引き受け、残りの人生を生きていく上での羅針盤としての役割を果たす「物語」を持つことで、女性は自分の人生に「意味」を見出す。


key word #3 "political rhetoric"(政治的なレトリック) 21行目


さて、著者は第一段落において、oral narrativesによってstory(物語)をつむぐことの大切さを語りますが、第二段落においては oral narrativesを at face value(額面通り)に acceptする(受け止める)態度に警鐘を鳴らします。oral narrativesは、disinterestedな(公平な)なcommentary(語り、記録)ではなく、文化的、歴史的要因によって影響を受けます。つまり、女性が提供する物語は無味無臭の事実ではない。


22行目の"for example"に注目してください。女性の物語へ影響を与える要因の例として、political rhetoric(政治的レトリック、政治的な解釈)を挙げてます。女性が the Second World War(第二次世界大戦)を、女性が家庭の外で仕事をすることが認知された時代として評価するかもしれないが、それは女性の労働力を必要としていた政治的な事情に利用された解釈(wartime rhetoric)に過ぎない可能性がある。political rhetoricという言葉は、ネガティブなニュアンスがあることに注意してください。政治的なレトリックとは、政治的な事情によって、権力者にとって都合が良い「物語」を作り上げて国民を操作すること、というニュアンスがあります。


いかがでしょうか?この文章を読む上で基本的な前提になっている考え方は「人は物語を必要とする」です。なので、当然女性論を語る上でも、女性が「女性の人生」にどのような物語を作っていくか、が大切になります。


男性の方で、フェミニズムの文章がちんぷんかんぷん(笑)な方は、この「物語論」がピンときていない可能性が大です。「物語もへったくれもない、女は女だ!」的な発想、「母性本能」という言葉に代表される様に、全てを「本能」という「動物的な面」に帰結させるような思考しかない方は、フェミニズムの文章の読解で苦労しますので注意が必要です。