石原慎太郎氏は「問題発言」の多さで有名です。今回の地震の直後の「天罰」発言も多くの批判を浴び、石原氏は後日謝罪されました。石原氏の発言は「政治家の発言」としては不適切な内容が多く、また表現の方法や論理の組み立てがめちゃくちゃで、さらには発言するタイミングや言い方が悪すぎます。被災者や弱者の気持ちへの配慮が足りない。ただし、石原氏の発言には、文学者的な感性による鋭い洞察が含まれている場合もあり、発言内容の全てがデタラメなわけではないのが難しいところです。誤解を避けるために確認させていただきますが、私は石原氏の天罰発言を擁護しているのではありません。あれはとんでもない発言、恥ずべき発言です。ですが、発言内容の一部には「考えさせられる点がある」と思います。


「天罰」発言について。
http://npn.co.jp/article/detail/75749482/
「我欲」や「ポピュリズム」を批判していること自体は間違っていないと思います。最近の日本が「我欲」や「ポピュリズム」によって悪い方向に向かっていたことは事実です。が、それを「津波によって洗い落とす」と比喩的・文学的に表現したのは、被災者の気持ちを全く理解できない、不謹慎な発言です。つまり、「我欲」や「ポピュリズム」が悪いことで、それを「津波が洗い落とす」と発言してしまうと、津波が「良いもの」(=悪いものを消し去るもの)ということに論理的にはなってしまい、津波の被害で苦しんでいる方々を精神的に追い詰めることになるからです。ですが、謝罪をされたことですし、この発言についてのコメントはこれくらにします。


もう1つ私の印象に残っているのは、「フランス語は数を勘定できない言葉だから、国際語として失格している」という、フランス語蔑視発言です。確かに、フランス語は20進法を元にして数を数えます。たとえば、94のことを、「20が4つと14」のように、20進法的に表現するのは事実です。でも、だからといって「数を勘定できない」は論理の飛躍が激しすぎる誤った発言ですし、また言語にはそれぞれ得意・不得意があるんです。「数を数える」ことだけに限定して考えれば、ほぼ全面的に10進法の発想で一貫している日本語の方が、フランス語よりも便利な言語ではあるかもしれません。各言語には、それぞれ得意な分野と不得意な分野があります。(逆に、ある種の思想、哲学、芸術等を語らせれば、日本語よりもフランス語の方が優秀な面があると思います。)まとめると、「数を数えるという点において、やや不便な面がある」ことが仮に事実だとしても、だからといって「数を勘定できない」は大げさで間違った解釈ですし、さらに「数を数える際に便利か否か」と「国際語として有効か否か」は、直接的な関係はない。


他にも多々の問題発言がありますが、いずれも「真理の一面をかすってはいる場合はあるけれども、論理的に破綻しており、少なくとも政治家の発言としては不適切なものが多いです。


このように、石原氏は問題発言が多い政治家です。また、私は学生時代からずっと「反原発」の立場をとってきましたので、「原発推進派」の石原氏とは政策的には馴染みません。が、やはり今回は、石原氏に投票するしかない、という結論を出しました。理由は、今のように有事の際には「リーダーシップ」「決断力」「人心掌握力」が必要だと思ったからです。


石原氏の人心掌握力の高さの例を1つ。


福島の原発へ向かうことをためらっていた東京消防庁のスタッフに対して、民主党の議員(海江田万里氏らしい)が「言うとおりにやらないと処分する」と「恫喝した」という主旨の内容を、石原氏が明らかにし、それを受けて海江田氏は「言った言わない」になるが「隊員に不快な思いをさせたのならおわびする。」と謝罪をした、という一件がありました。
http://www.sanspo.com/shakai/news/110322/sha1103221029020-n1.htm
管首相の発言を聞いていても分かるのですが、民主党のトップの政治家たちは、危険な作業をしなくてはならない自衛隊や消防庁のスタッフたちに「命令」や「恫喝」はするが、情熱と覚悟をもってスタッフの心を掌握する技量がないように思われます。


再び産経から引用します。
http://www.sanspo.com/shakai/news/110322/sha1103220507015-n2.htm
石原氏は消防庁の隊員達に、涙をながしながら「生命を賭して頑張っていただいたおかげで、大惨事になる可能性が軽減された」を感謝の念を伝えた。それを聞いた隊員の1人が、「あの強気の知事が涙をながして礼を言ってくれた。上から物を言うだけの官邸と違って、われわれのことを理解してくれている。だから現場に行けるんだ」と話したそうです。


命がけの作業をする人にとって、戦争世代で「特攻精神」を理解する石原氏が語る熱い言葉は心を動かすものなのでしょう。


美しいことばかりを言っていても政治は成り立たない。問題発言がないにこしたことはないが、政治家にはやはり「リーダーシップ」「決断力」「人心掌握力」が必要です。


政治も勉強し直します。まずはマックス・ウェーバーを読み直します。素人なのに生意気なことを書いてごめんなさい。合掌。生かして頂いて ありがとう御座位ます。