GMAT Official Guide 12th edition Q.102(p.676)の解説の続きです。




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論点 #3: "関係副詞 where”



(B)と(C)においては、関係副詞の"where"が使われています。


まず、基礎的な文法ルールの確認です。関係副詞の"where"は、"前置詞+which"(例:in which, on which, at which, etc)が、場所の意味の先行詞を持つ場合に登場します。


〇×クイズ


(1) John visited the city which he was born.
(2) John visited the city in which he was born.
(3) John visited the city where he was born.
(4) John visited the city in where he was born.


正解は


1. ×
2. 〇
3. 〇
4. ×


となります。 (1)は、関係代名詞の"which"に、先行詞の"the city"を代入して文を2つに分解すると、「John visited the city.」と「He was born the city.」となってしまい、後者の文に"in"を挿入して「He was born in the city.」としないと正しい文にならないことから、×であることが分かります。


(2)の"which"に、先行詞の"the city"を代入すると、"in the city"という前置詞句が立ち現れます。そして、この前置詞句(in the city)を用いて、この文を2つに分解すると、「John visited the city.」と「He was born in the city」という、文法的にも意味的にも正しい2つの文が完成します。よって、(2)は〇です。


(1)と(2)の違いは"in"という前置詞の有無だけなのですが、(1)が×で(2)が〇となります。


そして、(2)の文の"in which"の先行詞が、場所を意味する"the city"という名詞であるため、"in which"を"where"に置き換えることが許されます。よって、(3)も〇です。"前置詞 + which" = "where"(ただし、先行詞が場所の意味の名詞の場合限定)というパターンを覚えてください。


(4)ですが、"where"自体が、そもそも"in which"を置き換えたものなので、"where"に"in which"を代入しても、本来は文が成立していなくてはなりません。が、実際に"where"に"in which"を代入すると、"the city in in which"と、前置詞の"in"が重複してしまいます。よって(4)は×です。


さて、ここまでが基礎文法のルールなのですが、GMAT SCにおいては、もう一歩踏み込んだ分析が必要な場合があります。


(5) I was in a place where nobody could see me.


という形(場所の意味の名詞+関係副詞の"where")はありえる(〇)なのですが、


(6) I was in a situation where nobody would talk to me.


のように、状況や環境等を意味する語句(situation, position, family, etc)の後に、関係副詞の"where"をおくことは、SCにおいては許されていないようです。状況や環境を意味する言葉は「場所」の意味の語句と意味的に近いのですが、SCでは「物理的な場所」「そこに人が住んだり、歩いたりできるような、現存する物理的な場所」が先行詞の場合のみ、関係副詞の"where"と用いることが許されます。


さて、問題(OG 12th Q.102)に戻ります。(B)と(C)は、clan(一族、一門、クラン、ロングマンの定義では「a large group of families tha often share the same name」)という、「場所」ではなく」「人の集まり」を意味する先行詞の後に"where"という関係副詞がきているので×となります。(この"where"の論点は、OG 12thの解説ページにおいては触れられていません。)


もちろん、このような解法を使うためには、"clan"という言葉の意味を知っている必要があります。ですが、もし本試験で"clan"の意味が分からなかったら、この論点は使わずに、その他の論点やテクニックを使って問題を攻略すればよいだけのことです。(ちなみに、"clan"は、文化人類学や社会学の文章でよく使われる重要単語ですので、ぜひ覚えてください。)



論点 #4: 名詞の形容詞的用法 


"a shoe store"(靴屋さん)という表現において、"shoe"(靴)は形容詞的に使われています。"shoe"の本来の品詞は名詞なのですが、このケースでは、形容詞的に"store"を修飾しています。このような、「本来の品詞は名詞だが、形容詞的な働きをしている名詞」の用法を、「名詞の形容詞的用法」と呼びます。


名詞の形容詞的用法においては、原則として名詞の単数形が用いられます。つまり、"a shoe store"にといえは、おそらくたくさんの靴(shoes)が販売されているはずです。が、働きが「形容詞」であるために、ここでは単数形の形(shoe)が使われています。そもそも英語という言語には、形容詞に複数形が存在しないため、このようなルールが存在するのだと私は解釈しています。



名詞の形容詞的用法の例

(1) a baseball game (野球の試合)
"baseball"(野球)という名詞には形容詞の形が存在しないため、名詞のままの形で形容詞の「代用」をしている。(名詞が形容詞のごとく働いている)


(2) a five day vacation (5日間の休暇)
"five day"という名詞が、形容詞の代わりとして"vacation"という名詞を修飾しているため、単数形の"five day"が使われています。尚、"a five-day vacation"とハイフン(-)を使うと、より丁寧で親切な表記になります("five day"が、「5日間」という、1つの意味のかたまりをなしているということを明確にしている)が、ハイフンの有無まではSCにおいては気にする必要はないようです。(私でしたら、ライティングの際にはハイフンを使用します。)


さて、では以下の2択では、どちらの方がベターでしょうか?

(3) Japan Sea sediment
(4) sediment from the Japan Sea


正解
(4)の方がベターです。(3)の"Japan Sea sediment"も、間違いではありません。Japan Sea(日本海)という名詞が、形容詞的用法として"sediment"(堆積物)にかかっているからです。ですが、SCにおいては、名詞の形容詞的用法は嫌われる傾向にあります。なぜなら、多義的だからです。屁理屈に聞こえるかもしれませんが、(3) Japan Sea sedimentは、「日本海に現在存在する堆積物(sediment at Japan Sea)」という意味まのか、「日本海からとれた堆積物(sediment from the Japan Sea)なのか、はたまた「日本海的な特徴をもった堆積物(sediment that has a characteristic unique to the Japan Sea)」なのか等々、様々な意味に解釈することが可能になります。よって、多義性を避けるために、(4)の様な、名詞の形容詞的な用法を避けた形(sediment from the Japan Sea)が好まれます。(3)と(4)は、文法的にはともに可能ですが、SCにおいては(4)の方が正解になりやすい形です。


OG 12th Q.102の(C)において、"water access"という、使う必要がなく、意味的に曖昧な「名詞の形容詞的用法」が使われているので、意味的に明確な(A)の"access to water"の方が好まれます。この論点を根拠にして、(C)ではなく(A)を選ぶこともできます。




論点 #5: there is 構文 


SCにおいて"there is 構文"は正解になりにくい語句の1つです。もちろん正答例もあるのですが、there is 構文はwordy(冗長)になったり、SCで嫌われる名詞表現になったり(「there is +動作名詞」という形は、動詞を使っている表現よりもネクサスが曖昧になる(動作名詞の意味上の主語が曖昧になる)等の弱点があるため、正解になる可能性が低いです。なので、迷ったら、ダメ元のテクニックとして「エイヤ!」と、there is 構文を使っている(B)を斬ることもできます。


<補足>
SCの問題には様々な論点が潜んでいます。どの論点を重視するか、どのようなアプローチを採用するか(意味中心か、文法&語法中心か、ロジック&システム思考中心か、等々)によって、SCの授業のやり方が決まってきます。私は授業では「ロジック&システム思考」中心に、良く言えば切れ味のよい、悪いく言えば乱暴な(苦笑)解説をしています。「暗記」という要素は、できるだけ控えめにしています。