通訳論「その2」です。


松本道弘先生「勝つ英語」(明日香出版)より


松本道弘の勝つ英語―シンボルビルディングのすすめ


"The name of the game in Japan is haragei."という英語を、「日本では、ゲームの名前は腹芸である」と直訳しても分かりにくい。「日本では、勝負は腹芸で決まる」という意訳の方が分かりやすい上に、本質をきちんと伝えている。松本先生は、このような「本質をついた意訳」のことを「シンボル訳」と呼ぶ。


p.23〜p.24
「同時通訳は簡単ですよ。シンボルとシンボルを交換するだけです」と謎めいたことを仰っていた西山千氏の言葉が、師と別れた後も、私の耳にこだまし続け、英語道6段になってようやく「英語を学ぶのはこれに限る」と確証を得たのである。(略)「ボキャビルではない、シンビル(シンボルビルディング)をやりたまえ」と言えるようになった。(略)"What's in it for me?"(私のメリットは)が「私のためにその中に何があるや」と某大使館の翻訳官による迷訳されたことを知って、英和や和英の辞書による直訳がいかに危険であるかを・・・(以下略)


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学校の英作文として考えると、"The name of the game in Japan is haragei."を「ゲームの名前は腹芸」と訳したり、"What's in it for me?"「私のためにその中に何があるのか」と訳しても正解なのかもしれませんが、それでは言いたいことのエッセンスが伝わりません。英語を日本語に訳す際には、辞書的な意味で言葉を置き換えるだけではあまり意味がない。英語をまず「シンボル」や「イメージ」に落とし込んで、そしてその「シンボル」を日本語で表現することが好ましい。世間的な言葉でいうと「意訳」であるが、松本先生は「シンボル訳」と表現されている。


辞書的な訳や直訳による本を読むのは辛い。シンボルが感じられない。表面的な意味を壊さないと、魂に響く言葉にはならない。もちろん、直訳が必要な状況や場面もあるのだが、常に直訳をしていては心を打たない。


私は英単語の意味を指導する際には、できるだけその単語の「シンボル」や「言霊」を、「体の動き(ジェスチャー)」や「絵」、あるいは「記号」にて解説するように心がけています。もちろん、英単語の意味を日本語に置き換える(例:attitude→態度)ことも、一定程度必要な場合があることは認めます。でも、英単語を日本語に置き換えてだけで、その英単語の意味を本当に理解したと思ってもらっては困るのです。


合掌。生かしていただいてありがとうございます。