久しぶりに将棋の話です。
私はアマチュア初段の免状を持っており、プロの技の奥深さをある程度楽しむことができるレベルには達していると思います。今の私には、これ以上将棋を上手くなろうという欲や向上心はありませんが、将棋指しの人間模様や哲学・思想には非常に興味があります。将棋という趣味に出逢えたおかげで、人生が少し楽しいものになりました。
糸谷哲郎新竜王が誕生しました。将棋ファンの間では有名な話ですが、糸谷さんはかなりユニークな棋士です。おそらく頭が良すぎるからなのでしょうが、普通なら考えられないようなポカや反則をすることがあります。「二歩」とか「二手指し」なら分かるのですが、「相手の駒台に乗っている駒をつかんで指して反則負けをした」となると訳が分かりません。笑
http://matome.naver.jp/odai/2141773562099299001
糸谷さんは、哲学を専攻する大学院生でもあります。将棋と哲学の両方が好きな私にとって、糸谷さんの言動や発言は魅力です。
将棋世界 2015年02月号 p.10〜より (将棋を指さない方でも、読むと面白い記事だと思います。)
糸谷さんは、竜王戦第五局において、事前に研究していた手を指さなかった。「この手を指せば自分が有利になりそう」という結論を事前に出していたのに、対局中に浮かんだ他の手を指して、結果不利になってしまった。(結果的に勝負には勝った)
p.11
事前に答えがわかっている手を実践で再現しても意味がないように感じてしまう。
「これで指せる」(風太郎注:将棋で「指せる」とは「自分が有利になると感じる」ことを意味します)と知っている手があるとします。で、対局中にほかの手が浮かぶ。それはいい手かわからない。すると、実践で発見した方を指してしまうことがよくあります。どうしても知らない方をやってみたくなるんですよね。その方が面白いから。
p.12
いい手をわかっていても、自分の意にそぐわないと指したくない。
「こう指せば自分が有利」と分かっている状況でも、その場でふと頭に浮かんだ手を指してしまう。自分の収入や名誉が懸っている大勝負で、「面白いから」という理由で冒険をしてします。ロマンがあっていいじゃないですか!
哲学的に言うと、糸谷さんは「ロマン派」か「実存主義者」なのかもしれません。ハイデガーがお好きなようなので「実存主義者」と呼ばれる方がしっくりくるのかしらん。社会が決めた「正しい道」をあえて蹴っ飛ばして、良い意味で「わが道」を行く。そんな生き方をしている人には、糸谷竜王のあり方は刺激的に映るでしょう。
まじめな秀才タイプの棋士も好きだけれど、糸谷さんのような、ロマンを感じさせてくれる棋士にはワクワクします。勝つことや正しい手を指すことだけを追い求めるだけではなく、「面白い手」や「ロマンあふれる手」を探求する糸谷さんを応援します。竜王位獲得、おめでとうございます。そして、私も「面白い生き方」を貫いていきたいと思います。
合掌。生かしていただいてありがとうございます。