「日本は第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けたのに、戦後見事に経済復興を遂げた。何故なんだ?その秘密は?」と、金融業で成功を収めていたホスト・ファーザーに尋ねられました。勉強不足の16歳は頑張って回答したものの、まともな答えを提供することはできませんでした。「日本はダメな国だ」という洗脳がかかっていた私にとって、日本を肯定的にとらえるアメリカ人に出会ったことは新鮮でしたし、日本についてきちんと「知る」ことの重要さに当時の私は全く気付いていませんでした。


ある日、このホスト・ファーザーと一緒にテレビを見ていると、興味深い番組にぶつかりました。欧米人は虫の鳴き声を「左脳」が単なる「騒音」として認識するのにに対して、日本人は虫の鳴き声を「右脳」が「意味ある音・美しい音」としてとらえる、という解説がなされていたと記憶しています。「お前をそうなのか?どう思う?」と尋ねられたのですが、私は何も言えなかったと記憶しています。


近隣の小学校から「日本について話を聞かせてほしい」と依頼を受けたこともありました。写真やスライドを持って、軽い気持ちで小学校を訪れたところ、一学年全員(確か4年生くらいだったと思う)、たしか200人くらい(!)が待ち構えてたのでびっくり仰天。今みたいに通信が発達していなかった時代でもあり、私は事実上の「日本代表」でした。頑張って喋りましたが、いったい役にたったのかどうか・・ 勉強不足の自分に腹がたちました。


仲良くなったKenという友達の家へ遊びにいったところ、Kenのお母さんから「Zenに詳しい?Zenは好き?」と話しかけられました。私の回答は「Zenってなあに?」だった(苦笑)と記憶しています。「Zen=禅」であるとすら知らなかったし、禅のこと自体何も知らなかった。今から考えると、彼女はヒッピー文化や学生運動の時代のど真ん中を生きた人、カウンターカルチャーや日本文化に強い魅力を感じた人だったのでしょう。禅のことを全く知らない日本人留学生を見て彼女は本当に残念そうな表情をし、ため息すらついたと記憶しています。当時の私は「Shinto(神道)」と「Buddhism(仏教)」の違いすら理解していませんでした。今思い出しても恥ずかしい。


要するに、私は日本のことを殆ど何も知りませんでした。育った家庭が欧米文化に「毒されていた」せいや、学校教育の中で「自虐的な日本観」を学んでいた私は、日本のことについて積極的に学ぼうとしたことすらありませんでした。「日本のことを知らない日本人」であった私は、アメリカで初めて日本のことを「知った」のです。いや、正確に言うと「日本について知ることの重要性」を思い知らされたのです。