長く生きていると、時代の変化をしみじみと感じ取ることができます。コンピューター技術の進化により、コンピューターが計算や文字入力をテキパキとこなしてくれるようになりました。そして、その結果(私を含めて)人間の計算力は衰え、漢字を書けない人が増えている。丸山圭三郎が喝破した通り、人間は眼鏡をかけるようになって視力が落ち、歯を磨くようになって虫歯が増えたと考えることが出来るのではないだろうか。テクノロジーが進化して、その代り人間が退化する。


私は、自分が生きている間に、人間が将棋でコンピューターに勝てなくなる時代が来るとは夢にも思っていませんでした。将棋ファンの方はご存じの通り、今は将棋のトッププロが真剣に戦ってもコンピューターに負けるようになっているのです。

不屈の棋士 (講談社現代新書)


将棋どころか、将棋以上に差し手のの多様性を誇る囲碁においても、人間が勝てなくなりそうな様相を呈していますね。驚きです。


さて、私は「そんなに強い将棋ソフトを作ってどうするんだろう」「将棋に対するロマンが無くなってしまうではないか」と考えてしまう古いタイプの人間です。今は将棋のプロでもコンピューターのアイデアを取り入れて研究をするようになっています。米長邦雄が「最後は人間力の勝負だ」と喝破したように、泥臭い人間的な要素を感じることが好きで将棋に関わってきた私にはつまらない時代が来ました。