私は「日本ウソツキクラブ」の会員で、会長の河合隼雄先生とは、月に1回の打ち合わせでお会いしています・・・ うそうそ、エイプリルフールです! ははは。(注:故・河合隼雄先生は、自称「日本ウソツキクラブ会長」でした。)


こころの処方箋 (新潮文庫)



嬉しかった話を一つ。


私の友人の話です。しばらく前まで人間関係に苦しんでいたのだそうです。クライアント(お客さん)や家族の気持ちを受け止めることができず、コミュニケーションが上手くいかなかった。そして、そんなときに私のブログ(河合隼雄先生に関する文章)に出逢って救われたのだそうです。(苦笑) 私のブログの人生論や心理学の話なんて、正直言って誰の心にも届いていないのではないか、ただの自己満足じゃないのか、とずっと悲観的に考えていました。が、この度、少なくとも一人のお役にたてたことを知り、私自身が救われた気持ちになりました。まあ、実際には、私が救ったのではなく、河合先生が助けただけのことですが。(笑)



話の内容から類推すると、おそらく以下のエントリーを読んでくれれたのだと思われます。2006年ですから、ずいぶん前のことですね・・ 私が大学で「学生相談カウンセリング」の現場を持っていた時のことです。


http://d.hatena.ne.jp/futaro1968/20060328


カウンセリングで最も重要なことは「レッテルを貼らないこと」(NLP的に言うと「名詞化」しないこと)だと思います。そして、クライアントの人生の「物語」を尊重し、じっくりと「傾聴」する。下手に他人のことを理解しようとするから苦しくなる。究極的には「人と人は分かり合えない」と構え、相手の物語に寄り添って会話をする。


さだまさしさんの名曲「主人公」でも語られている通り、私の人生では私が主人公。相手の人生ではその人が主人公。相手の人生の中では私は脇役。それくらいの割りきりを持ち、相手の「物語」を尊重して会話をすると、その人に変容が起きる可能性がある。


友人のクライアントに、話にまとまりのない人がいたのだそうです。(症状や病名は伏せます) 私の友人は、以前はその人にいらいらし、厳しい言葉もぶつけたことがあるようです。が、河合先生の「物語論」に触れ、クライアントの「物語」をとことん受け止める決心をしたのだそうです。じっくりとそのクライアントの話を受容し、傾聴していくなかで、その人の症状は良くなっていったそうです。


私は河合隼雄先生に直接お会いする機会は結局ありませんでしたが、私の中で河合先生の教えは生き続けています。そして、河合先生の教えによって、今でも多くの人たちが救われているのも、否定できない事実だと思います。


有名な話ですが、作家の村上春樹氏も、河合隼雄先生との対話によって「救われた」一人だと思います。(以下の本も是非ご一読をお勧めします。村上さんに興味がない人も、心理学の予備知識がない方も、きっと読みこなせるはずです。)


村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫)


そして、河合先生の「物語論」を理解する上では、以下の本(作家・小川洋子氏との対談本)が一番お勧めです。この本も、非常に読みやすいです。河合先生最晩年の対談本です。


生きるとは、自分の物語をつくること


河合先生、素晴らしい著作を多数残して下さり、本当にありがとうございました。先生の教えにより、今でも多くの人たちが救われています。そして、微力ながら、先生のお仕事の一部を継承していきます。合掌。