先日、大学で「来年、英語の他にカウンセリングも担当するから、もしよかったら相談しに来てね」と話したところ、「えー、こわそー」という声が数人からあがり、たまげました。「そうか、カウンセリングってこわいイメージがあるんだ」、と思い知らされました。


テレビなどで、簡単な質問をするだけで人の性格を分類する「エセ心理学者」を見ているから、このような反応が出るのでしょう。私にカウンセリングなんぞを受けようものなら、心理テストを受けさせられたり、夢を告白させられたりした挙句、「お前はフェティシズムの傾向があるな!(笑)」とか「お前はアダルトチュルドレンだから、このままだと子供を虐待するぞ!(大笑)」などと言われると思っているのかなあ。 


カウンセリングはそんなものではありません。むしろ逆です。カウンセリングを受けに来た人に「レッテルを貼らない」「分析をしない」ことに全力を傾けるのがカウンセラーにとって基本中の基本なんです。


こころの処方箋
こころの処方箋
posted with amazlet on 06.03.29
河合 隼雄
新潮社 (1998/05)
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河合隼雄先生の凄さは、私の様な凡人には語りつくせません。日本を代表する心理学者です。この本は非常に読みやすい本なので、心の悩みを抱えている人、なんとなくむなしさを感じている人、特に若い人に読んでほしい!


この本の出だしの部分を抜粋します。

・・・・臨床心理学などということを専門にしていると、他人の心がすぐわかるのではないか、とよく言われる。私に会うとすぐに心の中のことを見すかされそうで怖い、と言う人もある。(略) しかし、実のところは、一般の予想とは反対に、私は人の心などわかるはずがないと思っているのである。 (略) たとえば、われわれカウンセラーのところには、「札つき」の非行少年と呼ばれる子が連れてこられるときもある。(略) 一番大切大切なことは、この少年を取り巻くすべての人が、この子に回復不能な非行少年というレッテルを貼っているとき、「果たしてそうなのだろうか」「非行少年とはいったい何だな」というような気持ちをもって、この少年に対することなのである。「悪い少年」だときめてかからないことが大切である。このような態度で会い続けていると、それまで見えなかったものが見えてくるし、一般の人々が思いもよらなかったことが生じてくるのである。(以下略)



そう、カウンセラーに一番大切なことは、「レッテルを貼らない」「周りの人から聞いた評判を鵜呑みにしない」「第一印象で人を決め付けない」ことです。周りから、「変な奴」「単なる怠け者」などと思われている人がカウンセリングを受けにきた場合でも、カウンセラーは、そのような評判は横に置いておき、その人の様々な可能性を信じ、その人の話をじっくりと聞いていく。そのように、レッテルを貼らずに、受容的な態度で真剣に話を聞いていくと、それまで誰も気づかなかった可能性、本人も気づいていなかった隠れた才能、などが立ち現れてくることがあるのです。