“私”はなぜカウンセリングを受けたのか―「いい人、やめた!」母と娘の挑戦
東 ちづる 長谷川 博一
マガジンハウス
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「自分がAC(アダルト・チルドレン)だと知ったのは37歳の時だった」という書き出しで始まる、東ちづる氏による衝撃の「格闘記」です。東氏が母親との関係に悩み、親子共にカウンセリングを受け、そしてそのカウンセリングの模様を本にしたという、過激な、しかし大変勉強になる1冊です。


私は、アダルトチルドレン論には詳しくありませんでした。TA(交流分析)が好きな私にとって、ACとはAdapted Child(適応された子供)のことであり続けていました。しかし、臨床の現場で「私、アダルトチルドレンなんです」という声を良く聞くようになり、遅まきながら読み出したのがこの本です。ちなみに、アダルトチルドレン(AC)も、Adapted Child(AC,適応された子供)も、親に合わせようとして、親に好かれようとして自分を見失う傾向がある点で、似ている概念なのだとは思います。<<>>>

「18年間の期待を裏切ったわねぇ」


居間のテーブルには不合格の通知。母はソファーに浅く座り、目を伏せ、息を吐くようにそう呟いた。(略)理解し合っていると信じていた母娘の関係が崩れた瞬間だった。「期待」って? 私はずっと母の期待に応えるための日々を送ってきたのだろうか?<<<<<>>>>>>


親に過度な期待を寄せられ、そしてその期待に過度に応えようとしていた東氏。ずっと優等生を演じてきた彼女の何かが、この母親の言葉で壊れた。そして、東氏は母と対決する必要を感じるようになり、カウンセリングという形で母親との関係を修復・発展させようとする。その辛い格闘の模様を赤裸々に伝える衝撃の本です。


私も、若き頃親に「2年間の留学は一切無駄だったな」と、衝撃の発言をされたことがあります。でも、後日親を問い詰めても、「そんなことは言っていない」の一点張り。東さんの母親も、「裏切ったわねぇ」という発言をしたことは覚えていないらしい。私の場合は、親と理解しあうことを早々と諦めました。でも、東さんは愚直に母親との対話を続け、理解し合うことを模索した。東さんはまじめで、自分の正体をさらけ出す勇気を持った素晴らしい女性だと思う。


愛は無条件のものであるべきだ。「勉強したら愛してあげる」なんていう「条件つきの愛」は偽りの愛にすぎない。条件つきの愛の下で育てられた
子供は、必要以上に周囲の人間に合わせようとしたり、低い自己肯定感に苦しむことになる可能性がある。


人を愛する以上は、その人の欠点を含めて、全てを愛さなくてはならない。