GMAT Official Guide 12th edition Q.102(p.676)の解説です。




The Official Guide for GMAT Review



論点 #1: "fewer"と"less”


そもそも、GMATは英語のネイティブスピーカーを主な対象として作られたテストです。従って、ネイティブスピーカーが日常的に誤って使用している文法、語法等が「ひっかけ」として頻繁に出題されます。


"fewer"&"less"の語法チェックテスト(○×形式)


1) John has less money than does Bob.
2) John has less books than does Bob.
3) John ate fewer rice than did Bob.
4) John ate fewer cookies than did Bob.


本来は、few/fewer(fewの比較級)は可算名詞(countable nouns)につき、little/less(littleの比較級)は不可算名詞(uncountable nouns)につきます。が、多くのネイティブが"fewer"を使うべき場面で"less"を使っており、厳密に言うと(少なくともGMAT SCにおいては)文法的な誤りです。だいぶ前のことになりますが、ロッテの元監督バレンタイン氏が、シーズン前のインタビューで"Now, there are less players to choose from."とコメントされていて、「あ、文法的には間違えだな、less→fewerとすべきだだな」と思ったことがあります。この「fewerとlessの混同」は、文法書や辞書によっては「口語的な用法・会話的な用法としてはOKである」と記載されていますが、GMAT SCでは「less +可算名詞の複数形」はダメであると認識してください。


よって、上記のチェックテストの答えは



1) John has less money than does Bob. ○(less+不可算名詞)
2) John has less books than does Bob. ×(fewer booksとすべき)
3) John ate fewer rice than did Bob. ×(less riceとすべき)
4) John ate fewer cookies than did Bob. ○(fewer +可算名詞)


となります。


というわけで、OG12th SC Q.102(p.676)の(D)と(E)における"less limitations"は文法違反です。




論点 #2: 名詞の可算名詞・不可算名詞の判断は<見た目>が優先 


上記の「論点 #1」において"less limitations"はダメである、と解説しましたが、このような解説をすると、「じゃあ、結局"limitations"が可算名詞であるということを暗記しておかないと、この問題は解けないのですね? 辞書には"limitation"は可算と不可算の両方の用法が記載されていますが・・」という類のご質問を受けることがかなり頻繁にあります。確かに、代表的な可算名詞と不可算名詞を「暗記」しておくことには価値があります(例:furniture, mail, luggage等の名詞が不可算名詞であると暗記することには意味があります)が、かといってSCや基礎文法の学習にといて「暗記」という側面を重視しすぎる傾向に、私は激しい違和感を感じています。「SCは結局暗記ですよね?」という問いかけに対しては、「本心的な理解が伴わない暗記は、結局混乱するだけでなかなか暗記できず、かつ本試験では応用が利かないですよ」と答えることにしています。


将棋の羽生善治・前名人(昨日名人戦で負けてしまった!)が、テレビのインタビューで「よくあんなに将棋の手順を覚えられますね〜」という問いかけに対し、「指し手の意味をちゃんと理解していれば覚えられる」という意味の受け答えをしていました。(すみません、記憶ベースです。)さすが羽生さん。真理をついています。「ちゃんと理解していれば覚えられる」という姿勢、「本質的な理解が伴わない暗記には限界がある」という姿勢で私はGMATの指導をしています。数学の公式の「暗記」や、文法ルールの「暗記」には、暗記するルールの本質や前提の理解が必要です。もちろん、ある程度の「機械的な暗記」が、言語学習において避けられないことは承知しています。(数学に比べると、文法の方がシステム的な思考が通用する割合が低くなります。)が、可算名詞と不可算名詞の区別については、ある程度法則性があるんです。


難しい議論をしているようですが、結論は簡単です。ご安心ください。GMAT SCにおける「可算名詞」と「不可算名詞」の区別は、基本的には「見た目で判断」すれば良いのです。


たとえば、experience(経験)という名詞には、可算と不可算の両方の用法が存在します。そして、"John has a lot of experience teaching."となっている場合は、"experience"に複数形の"s"がついていないことを理由に、不可算名詞として扱われていることと判断できます。逆に"John has a lot of experiences teaching."となっていれば、複数形の"s"がついていることから、可算名詞として使われていることが分かります。つまり、「"s"がついている場合は、基本的には可算名詞の複数形だと考えてよい」わけです。ちなみに、"a lot of experience"の方は「経験の量」を意識しているのに対して、"a lot of experiences"の方は「経験の種類の多さ」を意味しています。


同様に、"limitation"という名詞にも、可算と不可算の両方の用法が存在します(辞書でご確認ください)が、「"s"がついているのだから、"limitations"は<可算名詞の複数形>なのだろう!」と乱暴に考えることを、少なくともGMAT SCの学習のおいてはお勧めします。


このような議論が、本質的には「乱暴」な議論であることは承知の上です。学校伝統文法が好きな方は、「"s"で終わる可算名詞の単数形(例:a species)」や「"s"がつく不可算名詞(例:news)」等の例外を暗記されているかもしれません。確かに、そのような知識は無駄ではないのですが、GMAT SCにおいては、そのような例外的な名詞はあまり出題されません。「完璧を目指して、かえって混乱している」方が多いことに、私は危惧を懐いています。


確認問題: 正しい方を選びなさい。


(1) Government statistics (show/shows) that...

(2) The sixties (was/were) a time of ....


答え:


(1) showが正解です。確かに、"statistics"(統計学)という学問は不可算名詞扱いですが、具体的な統計(例:政府の統計、人口の統計、等)を意味する場合は、可算名詞の複数形扱いです。でも、私が調べた範囲では、SCの過去問では全て後者、すなわち「可算名詞の複数形」が正解となっています。これが、私が指導している「見た目優先の法則」です。乱暴な考え方ではありますが、「"s"がついている場合は、ほとんどの場合、可算名詞の複数形と考えてよい。GMAT SCにおいては、例外があまり出題されない」と開き直った方がよいと思うのです。伝統学校文法は、例外にこだわりすぎだと思うのです。


(2) wereが正解です。通常は、"the sixties"(= the 1960's = 1960年代)は、1つの時代区分として単数扱いをするのですが、原理原則に厳しいGMAT SCにおいては、"the sixties"は「60,61,62・・・69」を数え上げた複数形と認識しているようです。なので、ここでも「見た目優先の法則」を使って、「"s"がついているのだから、多分複数形なのだろう」と理解し、wereを選ぶべきです。実際に、過去問で出題されている論点です。