Official Guide 12th edition Q.101(p.676)の解説の続きです。



The Official Guide for GMAT Review


論点 #3: 代名詞のルール


選択肢(D)における"makes them likely to miss signs"の"them"は、意味的には、文頭の"Executives' being"のアポストロフィー(')の前の部分、つまり、Executivesを指す必要があります。もしそのような代名詞の用法が許されるのであれ ば、(D)の"to miss signs"の意味上の主語が"Executives"になり、意味的に正しくなります。


ですが、アポストロフィーの中にある名詞(この場合はExecutives)を、後で"they"や"them"という代名詞で受ける用法は、文章のスタイル上好ましくありません。


たとえば、


× (1) John's car is nice, and he is happy.



× (2) John's car is nice, and I am jealous of him.


等の文は、少なくともGMAT SCにおいては好ましくないようです。おそらく、以下がその理由です。


"John's car"という表現においては、"John's"が1つのかたまりとして形容詞的に"car"を修飾しています。つまり、"John's"が形容詞の働き をしているので、そのかたまりを分解して、アポストロフィーの中の名詞である"John"だけをとりだして、後で"they"や"them"で指し示すと 考えるのは、やや都合が良すぎるからです。"John"は名詞だが、"John's"は形容詞なのです。


ただし、このルールには例外があって、


○ (3) John's car is new, but his bike is old.


のように、"his"という所有格が"John'sを指すことはできるようです。(過去問に、このような正答例があります。)そもそ も、"his"という言葉は、実質的には品詞が形容詞(carを修飾している)なので、"his"が"John's"という、形容詞的な働きをしている言 葉を指し示すことは可能であると考えるのが自然です。(辞書的には、"his"は「代名詞の所有格」なのですが、実質的な働きは「形容詞」です。)


というわけで、選択肢(D)の"them"が"Executives"を指していると考えることには無理があるため、斬ることができます。



論点 #4: 副詞のかかる先 


最後に、選択肢(C)と(E)との比較です。


選択肢(C)の文末にある"if it has worked well in the past"という副詞節が、どこにかかっているか(どの語句を修飾しているか)を考えてみましょう。"if it has worked well in the past"が、主節(An executive who is heavily committed to a course of action is likely to miss or misinterpret
signs of incipient trouble)にかかっていると考えれば意味が通るのですが、もし"if it has worked well in the past"が直前の節(when they do appear)にかかっていると解釈すると、文が意味的に成立しなくなります。


ある意味、英語力がある方ほど、SCの選択肢を本来の意味(正しい意味)に無理やり読んでしまいがちなのです。つまり、上記の2つの解釈のう ち、意味が通る方の解釈、すなわち"if it has worked well in the past"が主節にかかっているという「勝手な」解釈をしてしまいがちです。が、SCにおいては「文の意味をどのように解釈できるか」ではなく、「文をど のように解釈するのが、文法的、スタイル的に好ましいか」を考え、そのような「SCのルール上可能な意味解釈」を、「正しい意味」と戦わせて考える必要が あります。


SCにおいては、原則的には「文末の副詞」は「直近の動詞」にかかります。つまり、SCのルールを考えると、"if it has worked well in the past"は"when they do appear"にかかるべきなのです。が、それが「正しい意味解釈」にはならないため、この選択肢(C)は正解ではありません。このように、副詞は場所次 第でどの動詞を修飾するかが決まってしまいます。そして、直近の動詞を修飾すると考えて、意味的に成り立たない副詞のことを、業界では"Dangling Modifier"とか"Misplaced Modifier"と呼びます。(副詞だけではなく、形容詞にもあてはまる考え方ですが、ここでは形容詞についての解説は省略します。)


正解の選択肢(E)は、"especially one that has worked well in the past"という同格句("one"は"a course of action"を指している)を使用することで、選択肢(C)における Dangling Modifierの問題を修正しています。ちなみに、同格句を使っている選択肢は、統計的に正解になる可能性が高いです。(E)は、SCにおいて極めて正 解になりにくい"being"という言葉が使われてはいるものの、"being"という動名詞を主語にする「意味的な必然性」があり、その他のいくつかの論点を検証した結果、最も適切な選択肢であることが分かります。