トライアルとしてGMAT SC(Sentence Correction)の解説をさせていただきます。題材はGMAT Official Guide 12th editionのQ.101です。「最初に選択肢を<縦>に眺めてスプリット(問題の論点)を探す」か、あるいは逆に「原文を<横>に読んで文意をとることから始める」か、という2つの主流の解法のどちらがベターか、という専門的な議論には触れず(解法については授業の中で扱います)、SCの問題の中に潜んでいる文法的、語法的、意味的な論点を中心に解説します。文法が苦手な方、SCで苦戦している方を特に意識して、丁寧に分かりやすく解説することを心がけます。


The Official Guide for GMAT Review


OG 12th p.676 Q.101


論点 #1 “being”


正解は(E)です。”being”はSCにおいて極めて正解になりにくい語句なのですが、beingを必要とする構文や文意の場合は、稀ですが正解になります。


たとえば


× (1) Happy is important.


は文として成立していません。”happy”は形容詞であり、形容詞は文の主語になることができないからです。アメリカ人と話していると、”Happy is good.”の様に、形容詞を主語にしている文を耳にしますが、文法的にはダメです。


○ (2) Happiness is important.(幸福は重要である。)


“happy”という形容詞の名詞形は”happiness”(幸せ)であり、主語になることができます。「幸福」「幸せ」という、抽象概念が重要である、という意味になります。
それに対して、


○ (3) Being happy is important.(幸せな状態であることは重要である。)


と、動名詞のbeingを加えた文は、「幸せ」という抽象概念ではなく、「幸せな状態にあること」という「状態」を意味しています。


このように、(1)の文を修正する手段は(2)と(3)の両方があり、(3)の「状態」の意味を表現する場合には”being”という言葉を使わざるを得ません。


Being healthy is important.(健康な状態であることは重要である。)
Being loved by someone is precious. (誰かに愛されているという状態は貴重である。)


正解の(E)は、「なんらかの一連の行動に深く関わらされている状態」という意味の主語を形成するために”being”という動名詞を使っているのです。


論点 #2 ネクサス(潜んでいるSV関係) 


必要以上に文法用語を使う必要はないのですが、便利なので「ネクサス」という概念を使わせていただきます。ネクサスとは、潜んでいるSV関係のことです。


たとえば、


Cathy makes me happy.(キャシーは私を幸せにする。)という第5文型(SVOC)の文においては、OとCの間にSV関係が潜んでいます。このCathyの例文において、"me happy"の部分に「I am happy」という関係が潜んでいます。第5文型は「O=Cという意味関係がある」という理解の仕方もあるのですが、私は「OとCの間にネクサスがある(SV関係が潜んでいる)」という解釈の方が応用が利くと思います。


さて、正解の(E)ですが、"make an executive miss signs"の部分に、「an executive: S」「miss : V」というネクサスがあるので、「誰がmiss signsしたのか」が明確になっています。(an executive が miss signs した)それに対して、(A)の選択肢においては、 "makes it likely to miss signs"の中の"miss"の意味上の主語(ネクサス上の主語)が不明なので、(E)に比べると意味的に不明瞭(missの意味上の主語が不明)です。"make it likely to do"という構文における"to do"の意味上の主語を明確にしたければ、"Rain makes it likely for me to stay home."のように"for +意味上の主語"を挿入する必要があります。


(B)も、"makes missing signs of incipient trouble or misinterpreting ones likely"の部分における、"missing sings"という動名詞のネクサス上の主語が曖昧なので、(E)よりも劣ります。また、そもそも、makeという5文型の動詞の後の"O"(目的語)の部分に動名詞を用いるのは、非常に不自然な英語です。


(1) Rain makes playing baseball outside difficult.


よりも


(2) Rain makes it difficult to play baseball outside.


という"it... to..."構文を使った方が自然な英語になります。


この問題(Q.101)については、あと2つほどご紹介したい論点があります。(続く予定)