自分で言うのもなんですが(笑)、私はアメリカの高校で成績が抜群でした。数学、英文法、勉強法(Study Skills)、タイピング、コミュニケーション(Interpersonal Communication)等のクラスでAを取ったと記憶しています。でも、アメリカ史だけは落ちこぼれました。ホストファーザーは「お前は勉強ができるのに、なんでアメリカ史だけが極端に成績が悪いのか不思議だ。何故なんだ?」とよく話しかけられていました。(苦笑)アメリカ史に興味はなかったのですが、留学プログラムから「アメリカ史だけは絶対に履修するように」と強制されていたので、選択の余地がなかったのです。
アメリカで育てば、当然ながらアメリカ史の知識は自然と身に付きます。そして、アメリカの学校では、今考えれば当然のことなのですが、アメリカ史のクラスで「アメリカ中心の世界観」が教えられます。だからこそ、留学生にはアメリカ史の授業を必修としたのでしょう。
ある日、アメリカ史のクラス内で「広島の原爆投下は正しかったのか」をテーマにしたディベートが行われました。私は原爆の悲惨さを涙目になりながら切に訴えかけたのですが、歴史の知識も弁論術のスキルにも欠ける私は、あっさりと敗北しました。そして、授業の後半では、原爆投下が正しかったという意見とその理由を延々と聞かされることになったのです。
最近は、アメリカの世論が変化しており、アメリカ人の中でも「原爆投下は間違えであった」と考える人の割合が増えているようですが、少なくとも当時(1980年代中盤)は原爆投下を正当化する主張が圧倒的多数でした。また、真珠湾攻撃の日(12月7日)には日本人がイジメに遭う可能性があるので注意するようにと、事前に注意が促されました。「そうか、私は敗戦国の人間なんだ」ということを自覚させてくれたのがアメリカ体験でした。
私がアメリカ史の授業で落ちこぼれた直接的な原因は、単に私の知識不足だったのだと思います。当然ながら、アメリカに育って幼い頃からアメリカ史のエピソードを聞かされて育った彼らにかなうわけはありません。でも、今になって振り返ると、その間接的な原因は私が「アメリカが示す世界観」を無意識的に拒絶したことにあるような気がしてなりません。
私は、Affinity英語学院の受講生に、アメリカ史を学ぶことを強く促しています。アメリカ史の基礎をおさえておかないと、GMATの歴史や思想に関する文章を正確に読み解くことが困難だからだというのが直接的な理由ですが、同時に、私は日本のエリートたちに「アメリカの目から見たアメリカ史や世界史」をしっかりと学んでほしいという願望も持ち合わせています。たとえば、The United Nations(一般的には「国連(国際連合)と訳される)は、実は第二次世界大戦中には"The Axis"(枢軸国)に対する「連合国」という意味合いで使われていた単語であり、今でも日本は「敵国条項(Enemy Clauses)」の対象となる可能性すらあるという「国際的な常識」を、賛成反対の意見はともかく、まずは「知って」ほしいのです。